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キニスンがはいったのは、はいる必要があると感じたからだった。彼は、これから起こることが少しも愉快なものではないということを完全に知っていた。これから起こることがぴんからきりまで気に入るはずがなかった。また実際、気に入らなかった。事実、彼は、この仕事がはじまるまえに気分が悪くなればいいと思った――猛烈に気分が悪くなればいいと思った。ナドレックは、彼の精神的肉体的苦悩を知覚した。
「同志キニスン、あなたがいる必要はないのに、のです?」彼はキニスンがのちによく知るようになった驚くべき平静さで、それでもいくらかおもしろそうに、またふしぎそうにたずねた。「わたしの力は確かに卑小ですが、あなたが知りたいと望んでいる情報を獲得して、それを正確に伝達するというような、些細な問題を処理するには、充分な能力があると思います。わたしにはあなたの感情が理解できませんが、それらがあなたをキャロウェイ FT構成する本質的要素であることは完全にわかります。あなたはそのような心理的抑圧や苦痛を、不必要に自分に課する必要はありません」 キニスンもトレゴンシーも、パレイン人の言葉の妥当性を認め、残虐《ざんぎゃく》な場面に立ち会わないですむ適当な口実がみつかったことを喜びながら、ただちに船へひきあげた。 その陰惨な洞窟の奥で、実際にどんなことが起こったかを詳細に述べる必要はない。仕事は長くかかり、なまやさしいものではなかった。デルゴン貴族が圧倒されるまでの戦闘自体が、どの地球人の目にも充分苛烈なものだった。バレリア人たちは堅固な宇宙服に身を固めていたが、死んだ者はひとりにとどまらなかった。怪物的なデルゴン貴族が最後のひとりまで、拷問スクリーンに固定されて身動きもできなくなるまでには、ウォーゼルも宇宙服は破れ、皮のように固い肉がひき裂かれ、焼けこげ、ずたずたになるというしまつだった。ナドレックだけが無傷ですんだ――Callaway FT彼は、自分が無傷ですんだのは、戦闘に加わらずに観戦していたからだと説明したが、事実そのとおりだった。 しかし、戦闘のあとにきたものは、もっとずっと悪かった。すでにのべたように、デルゴン貴族は、自分たち自身に対してさえ苛烈で冷酷で無慈悲だった。彼らは極度に無情で、頑固で不屈《ふくつ》だった。したがって、彼らがたやすく説得に応じなかったということは、協調するまでもあるまい。是が非でも必要な情報が、彼らの頑強《がんきょう》な心から洩らされるまでには、彼ら自身の拷問用具が徹底的に用いられねばならなかった。憤怒《ふんぬ》に燃えたヴェランシア人のウォーゼルは、復讐心と憎悪に駆りたてられながら、それらの拷問用具を用いたが、それは少なくともある程度理解できることだった。しかし、ナドレックは冷静に効果的に無情に拷問用具を使った。キニスンはナドレックのその態度を考えるだけで、氷のような戦慄が背筋を上下するのを感じた。</ PR |
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